メルペイ・AU PAY 等の構造整理

日本のQRコード決済(前払式 / 資金移動)サービスの構造を、規制レイヤー・資金フロー・関係主体に分けて整理します。

目次

  1. 法的レイヤー(一番下の "ハードキャッシュ" の正体)
  2. 全体スタック
  3. 流入(チャージ/インフロー)
  4. 流出(利用/アウトフロー)
  5. 加盟店精算サイド
  6. メルペイ / AU PAY 固有のポイント
  7. 資金フロー全体図(ステーブルコインと対比)

1. 法的レイヤー(一番下の "ハードキャッシュ" の正体)

これらのサービスは「資金決済法」のもとで、主に2種類のライセンスを 併用 しています。

ライセンス 主な用途 残高の保全義務 出金(現金化) 個人間送金
前払式支払手段発行業 チャージ→加盟店決済 未使用残高の 50%以上 を供託・保全
資金移動業(第1〜第3種) 送金・出金が必要な機能 要履行保証額の 100% を保全

メルペイもAU PAYも「前払式」と「資金移動業」を 両方 持ち、機能ごとに帳簿(残高ポット)を分けています。

"ハードキャッシュ" の保管先

ユーザーから預かった現金は、発行体のB/S上は 負債(前受金/預り金) で、保全先として:

  1. 法務局への供託(発行保証金)
  2. 銀行・保険会社の保証契約
  3. 信託銀行への信託

…のいずれかで分別管理されます。会社が倒産しても、ここから優先弁済される建付けです。


2. 全体スタック

┌────────────────────────────────────────────┐
│ ユーザーUI(残高表示・QR・送金・出金)        │  ← アプリ層
├────────────────────────────────────────────┤
│ ポイント・キャンペーン原資                    │  ← マーケ予算(自社費用)
├────────────────────────────────────────────┤
│ 残高台帳(前払式 / 資金移動業の2勘定で分離)   │  ← 発行体の内部DB(負債)
├────────────────────────────────────────────┤
│ 加盟店決済ネットワーク(自社アクワイアリング)   │  ← 加盟店精算
├────────────────────────────────────────────┤
│ 銀行口座 / 信託 / 供託(法定保全)            │  ← "ハードキャッシュ"
├────────────────────────────────────────────┤
│ 全銀ネット・Pay-easy・コンビニ収納代行・カード網│  ← 外部金融インフラ
└────────────────────────────────────────────┘
重要なのは:「残高」は発行体の内部DBの数字に過ぎず、対応する現金は別レイヤーの銀行口座・信託・供託に1:1(前払式は最低50%)で紐付いている、という二層構造です。

3. 流入(チャージ/インフロー)

経路仕組み現金が着金する場所
銀行口座連携チャージ全銀ネット経由の口振 / 即時口座連携(Web口振受付サービス・API連携)発行体の銀行決済口座
ATM チャージセブン銀行等のATMで現金投入ATM運営銀行→発行体口座
コンビニ現金チャージバーコード提示→収納代行収納代行会社→発行体口座
クレジットカードチャージカード会社経由(資金移動業ではNG運用が一般的)カード会社→発行体口座
キャリア決済通信料合算(au かんたん決済・d払い等のキャリア決済との連携)キャリア→発行体
売上金からのチャージメルカリ売上金 → メルペイ残高への振替グループ内の付替(外部資金移動なし)
ポイント・キャンペーン付与自社マーケ費用から残高へ発行体のP/L費用→負債計上
受取(送金・割り勘)他ユーザーからの内部振替内部台帳の付替のみ
給与デジタル払い厚労省指定資金移動業者経由(PayPay等先行、AU・メルペイも対応進行)雇用主→発行体口座

4. 流出(利用/アウトフロー)

経路仕組み現金が出ていく先
QR/NFC加盟店決済自社アクワイアリングで承認→残高減算→加盟店へ後日精算加盟店銀行口座(手数料控除後)
オンライン決済同上(API)同上
個人間送金残高の内部付替発生せず(台帳のみ)
銀行口座への出金資金移動業残高のみ可。全銀ネット経由ユーザー銀行口座(出金手数料あり)
公共料金・税金請求書払い(収納機関へ)収納機関
返金加盟店→ユーザー残高へ戻す内部付替+加盟店請求調整
失効・払戻前払式は原則払戻禁止、資金移動業は払戻可ユーザー口座

5. 加盟店精算サイド(よく見落とされる)

ユーザーが100円使うと:

  1. アプリで残高 −100円(前払式残高の負債が減る)
  2. アクワイアラ(多くは発行体本体 or グループ会社)が加盟店に対し、月2回や翌営業日サイクルで精算
  3. 加盟店手数料(1.5〜3%程度)を差し引いて入金
  4. このタイムラグの間、現金は発行体の銀行口座に滞留 → ここがフロート収益の源

ただし保全義務があるため、フロートを自由に運用できる範囲は限定的です(資金移動業は100%保全、前払式は50%超の部分のみ運用可能)。


6. メルペイ / AU PAY 固有のポイント

メルペイ(株式会社メルペイ)

au PAY(KDDI)

共通する収益源

  1. 加盟店手数料(メイン)
  2. 出金手数料・送金手数料の一部
  3. フロート運用益(保全枠を除く部分)
  4. 後払い・カード等の別レイヤーからの収益(金利・手数料)
  5. 経済圏の送客価値(広告・クロスセル)

7. 資金フロー全体図(ステーブルコインと対比しやすい形)

[ユーザー銀行口座] ──チャージ──▶ [発行体の銀行/信託/供託口座]  (←ここが "裏付け資産")
                                          │
                                          │ 1:1 で発行
                                          ▼
                                  [アプリ残高(負債台帳)]
                                          │
                  ┌──────────────┼──────────────┐
                  ▼              ▼              ▼
            加盟店決済      個人間送金       銀行へ出金
                  │         (台帳付替のみ)         │
                  ▼                              ▼
        [加盟店銀行口座]              [ユーザー銀行口座]
   (発行体口座から精算サイクルで送金)   (資金移動業残高のみ)

ステーブルコイン的にいえば: